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子育て

何故起きた待機児童問題(子育てシリーズ4回目)

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待機児童が何故起きたのかを見る上において2つの事が重要である。
待機児童の定義と何故ずっと解決しないかだ。

待機児童の定義

待機児童とは、

区市町村に認可保育所の入所を申し込み、入所要件に該当しているが入所できない児童のこと。
但し、地方単独保育施策等で保育されている児童は、待機児童数から除外される。

東京都で見ると下記人数が推移だ。

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<平成24年2月27日 保育制度改革に関する緊急提言について

新定義と旧定義がある。この違いは図の注意書きにも書かれているが、

認可保育園に入れなくて仕方なく認証等の認可外保育園に入った人は待機児童としない

形になっている。
一般の人の考えでは、認可保育園に入れない人の数を言うのだが、どうも行政は自らは保育園を整備したく無いようだ。
前回の記事で認可外保育園の質が認可保育園と比べると低い旨の記載をしたが、行政は認可外保育園を増やす事でなんとか帳尻を合わせたいようだ。

認可保育園の方が安くて質が良いのであれば、認可外保育園には入れたくない。
国と一般の人との考え方が合っていない用語になっているのが待機児童という言葉である。

何故解決しない?保育園利用者の増加の背景

昔は女性は結婚したら退職が当たり前だった。その内に妊娠したら退職が当たり前になった。そして今では退職した後復職して働き続ける事が出来るようになった。
この結果、子供は保育園に預けて仕事をする事が必要になり、その保育園が今足りない状況にあるのが現在である。

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1991年、2001年と2011年の比較においても女性が各年齢においても労働者が増えている事が分かる。

では待機児童が増えたのは女性の社会進出だけによるものかというとそうでもない。
むしろ社会的な構造が共働きで稼ぐ収入でなんとか平均レベルの収入を確保しようとしている事である。

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厚生労働省 国民生活基礎調査より

働いてお金稼ぐ形で暮らせるのが良いのだが、男もそう給与が上がらない状況になっており、世帯で考えた場合には一馬力より二馬力の方が世帯の収入はそのまま増える形だ。
ただ、それでも給与が平成23年では大きく減少してしまっている。景気等の動向もそうだが、弱年齢者を中心として平均年収の低下が影響している事がある。

行政の保育についての考え方

そもそも行政としては保育園は保育に欠ける場合に預かりますよというスタンスであり、保育は家庭の問題であるという考え方が基本にある。

練馬区のHPにある保育園の定義は、

保育園とは、保護者が家庭でお子さんを十分に保育できないとき、保護者に代わって保育する児童福祉法に定める福祉施設です。

十分に保育できないときとは練馬区では下記で説明されている。

  1. 保護者が働いている場合(家事や育児は含みません。)
  2. 保護者が病気の場合、または保護者の心身に障害がある場合
  3. 保護者が長期にわたり病人や心身障害者等を介護している場合
  4. 保護者が出産する場合(出産月とその前後2か月が対象)
  5. その他、保護者が保育できない事情がある場合

※注釈:集団生活を経験させたいなどの理由は該当しません。

基本的には世帯で保育や子育てはしましょうというのが基本であって、世帯で保育出来ないなら預かりますよという考え方である。
そりゃあそうだと思う。昔から子育ては世帯で行なっていた。

しかし、世の中の流れの変化によって共働きが世の中にどんどん浸透しており、働く母親という存在が大きくなりつつある。
ただ、少子化や予算難という側面もある事からそこまでは箱物施設の新規着工も出来ない現状がある。つまり社会の変化に対して行政が追いついていないのが現状である。

国としての方針

経済については経済産業省であり、教育については文部科学省であり、福祉施設については厚生労働省の範疇である。そしてその方針に基づき行動をするのが地方公共団体である。

共働きが普通では無かった時代においては、家庭は女性が。教育は幼稚園が。どうしても家庭で子供を保育出来なければ保育園。元々こういう区分けであった。

では今はどうか。

結婚して子供を産んだ女性も働こう!保育園は地方公共団体が整備しろよ。(厚生労働省
就学前の教育も大事じゃね?幼稚園行かない子供が増えて小1プロブレムとかいう問題が小学校で起きてるんだが。(文部科学省経済産業省
共働きで女性の納税者数が増えて、全体の納税者数が維持出来て嬉しいです。(国税庁

国として統一の基準なんて無く、行政の縦割りでそれぞれの権益に基づいて好き勝手言っているわけだ。

地方公共団体

当然ながらこんな状況であるからには、地方自治体も積極的に事前に保育園増設なんて出来るわけ無く、更に東京都では出生数の歯止めから増加に転じた事で保育園不足に拍車がかかった事で保育園に入れない人が多数出てしまった。
対して幼稚園には空きが出る等々大変な状況になっているのが現在である。

保育園の定員よりも幼稚園の定員数の方が多い。

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再掲(子育てシリーズ1回目を参照)

そんなに専業主婦の割合が多かったか?
日本という国の方針が変わりつつある中において、未だに体制転換が出来ていないのが地方公共団体である。

何故共働き???

要は女性も働かないと生きていけない世の中になったという事だ。共働きをしてようやく平均レベルの所得になる。
下記図は世帯の平均年収だ。共働きしても昔のようにお金を稼ぐ事が出来なくなっている。
そして少子化によって日本の国の労働力が減るから共働きしようという点はその通りであるが、今現在労働力が減っているはずなのに失業率は上昇している。
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(出典:厚生労働省 国民生活基礎調査)(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa11/dl/03.pdf)(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/0906/h0628-9g.html)

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本来の労働力が不足しているから女性も社会で働きましょうというのは説得性に欠ける。もちろん女性の社会進出は素晴らしい事であるし社会にとってもプラスではある。
しかし安易な労働力が過剰に提供されすぎて賃金の低下を招く。これが現在であり、更に共働きが必要な世帯が増える形にも繋がっている。
更に単純労働においては、機械化はITによってどんどん削減される一方である。
もっとも国としては、労働者が増えれば増える程納税者が増えるので、こういった国の方針にも踊らされている形にもなる。
⇒この辺りは共働きの弊害として以前の記事に詳しく記載

まとめ

結果的に誰が犠牲になるかというと子供だ。普通に考えて「親に満足に普段から甘えたり笑ったり会えない」子供がうまく成長するだろうか。
そうじゃないという主張も分かるんだけど、生物としてどうなのよって感じですね。自分を騙して保育園へ預けるしかないのか。
先のリンクに載せた経済産業省経済産業政策局の資料の中で地域における教育機能の低下が著しい旨の記載がある。
まさにその通りだと思う。
保育園は子供を預かる福祉施設であって、教育施設では無い。
親は親で働く事に忙しく、教育なんてしてられない。
果たしてこんな事でいいのか。ともかく預ける上においては過酷な保活をすべきなのか。
行政の読みの甘さと責任感の無さがここまで状況を悪化させている現状である。

そりゃ満足のいく保育をしてくれる保育園があればいいですよね!

次回はビジネスとしての保育を考える。

■子育てシリーズ

1.保育園と幼稚園の違い(子育てシリーズ1回目)
2.保活!! 保育園(認可)への入れ方(子育てシリーズ2回目)
3.認可外保育園は認可保育園の20倍の死亡率?認可保育園と認可外保育園(無認可保育園)の違い(子育てシリーズ3回目)
4.何故起きた待機児童問題(子育てシリーズ4回目)
5.ビジネスとしての保育園を考える(子育てシリーズ5回目)
6.3年間抱っこし放題政策から保育の問題を考える(子育てシリーズ6回目)

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