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子育て

ビジネスとしての保育園を考える(子育てシリーズ5回目)

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保育園はビジネスになるのではないか。
世の中これだけ待機児童の問題が叫ばれている中、行政が解決出来なければ民間がビジネスチャンスを求めて進出するのが当たり前だ。
この点を少し考えてみた。

認可保育園

まず認可保育園は国や地方公共団体、市町村からの補助金だけで運営出来る。
よって、単純に施設を作ればビジネスになる。

しかし、認可保育園を作る為には様々な問題点がある。まず第一は国が決めた設置基準をクリアする必要があるという点だ。細かい仕様が決まっており、賃貸で建物を借りた場合においても内装費用に多額のコストがかかる。
まあ、補助金で出来るとは思う。そして問題なのは、認可保育園の新設の申請受け入れは都道府県であるが、以前に企業が行なっていた保育園運営が失敗した経緯があった事から、企業による参入が難しいという現状がある。

最近では厚生労働省から各都道府県に企業にも門戸を開くように通達が出るくらいなので、変わるかもしれないが、、、、

最近ではベネッセが子会社のベネッセスタイルケアという会社が保育園事業に参入している。近くの石神井公園にも出来ており、とてもいいなーと思う次第。
だが認可保育園なので入れるのは至難の業。
ただ、これだけ熱意を持って保育を行なってくれる保育園にこそ入れたいと思うのが親としての心。

しかし採用の部分を見ると人件費はかけられていないようだ。
これでは果たして働く側の人のモチベーションは厳しいかなとも思う。

しかし、経営面で考えると人の募集にお金を払う必要は無く、集金も地方自治体が担ってくれる。
ただひたすらに保育だけすればいいという事から、儲けやすいといえば儲けやすいが、ある一定以上の利益にする事は不可能だ。

認可外保育園(認証等の地方公共団体公認の保育園)

認可外保育園の一種である東京都独自の認証の保育園の場合、東京都からの補助金と利用者に対して月額の費用を請求出来るが上限が決められている。この為1人辺りの売上の最大化においてキャップがかけられている。

保育士1人辺りが見る事が出来る子供数は年齢によって決まっており、定員を増やす為には保育士の獲得が必要であり、子供1人辺りの売上は決まっているので当然ながら保育士1人辺りが売り上る金額も決まっている。

  • 乳児 乳児3人につき保育に従事する者1人
  • 1、2歳児 幼児6人につき保育に従事する者1人
  • 3歳児 幼児20人につき保育に従事する者1人
  • 4歳以上児 幼児30人につき保育に従事する者1人

つまり利益率を上げる事も出来ず、結果的に保育士といった労働者の給与も上がらない状況になり、経営者としては保育士をいかに安く買い叩くか、施設費を安くするかが勝負になってくる。
そしてこんな事ばっかり考えていると、保育の質が疎かになる。

完全な認可外保育園であっても認可外保育施設指導監督基準というものがあり、6人未満の施設を除いてこの基準には従わないといけない。
先に述べた子供の人数に応じて保育士を割り当てる等は絶対に必要な事であり、認可外保育園であってもこれを守る必要がある。

保育士1人を雇う為には、月額30万円程度は必要である。(人件費、福利厚生費、年金等の費用含む)
この1人で0歳児3人を見るとなると、1人辺り10万円を最低として、設備費用等も考えると20万円程度貰わないと割に合わない。
しかし、現実問題そんなにお金を貰える訳ではない。いかに低年齢の子供を預からないようにして、年齢が高い子供の割合を増やすかという点に全てが尽きてしまう。

保育士もこの悪循環に陥ると顧客に目を向ける事も無くなってしまう。現在の行政の問題は認証保育園の利用者への課金に制限をかけている点である。いくら質の良い保育を提供しようとしても、ユーザに対して課金出来る金額に上限があるのであればおのずと限界は見えてくる。

但し、認証以外の無認可保育園は特段費用の上限は無いが公共団体からの援助は無い。この為利用料を値上げする事で利益を出す事は可能だが、無認可や認可外という言葉から一般利用者からは敬遠されてしまうのが現状である。

保育園に望まれている事とのギャップ

ビジネスとして考えた場合認可保育園で提供する事はまあ損はしないというレベルでしか無い。
認証はコストばっかりかかってしまうので実は割りに合わない。となると認可外の保育園を提供する事で、今の親達と行政の間にあるギャップを埋める事が出来ればビジネスになるのではないか。
まずはこのギャップについてちょっと整理してみよう。

ビジネス目線で考えた場合、親達のニーズに合わせた施設を用意すればよい。

  • 朝早く(朝6時)から夜遅く(23時)まで預けられる
  • 幼稚園同様の教育をしてくれる
  • 広く充実した環境がある
  • 子供の急な病気にも対応してくれる
  • 給食制度がある
  • 希望者には幼児教室並みの教育をしてくれる
  • 早いもの勝ちでは無く、お金がある人だけ入れる
  • 常に携帯電話で子供の現状の確認が取れる
  • 定期的に子供の状況が携帯電話に送られる
  • 認可保育園以上の質

こんなリッチな事が出来れば、安心して共働きが出来るようなものだが、全部補助金無しで叶えると0歳児の親にかかるコストは30万円~/月かかりそうなので、ベビーシッター頼んだ方が早い気もする。

満足がいく保育は相当コストがかかるビジネスになる。質の高いサービスを子に提供してくれるなら喜んでお金払いますという人がとても多いのであれば十分なビジネスになるであろう。

しかし、実際にはとてもそこまでお金を払える人は少ない。一部上場会社正社員同士の家庭で世帯年収1,000万円でも厳しい。ベビーシッターを雇った方が本当に良いと思う。
残念ながら企業が保育園事業に進出したとしても営利目的では非常に厳しい。
更に認可外保育園として運営するのであれば、認可外=質が悪いと思われている現状の打破が必要である点。保育士も認可外や認証は扱いが悪くて皆認可を志望する事になる。
人材集めにも相当苦労する事になろう。

まとめ

女性が会社で共働きする事によって子供を保育園に預ける事が必要になる。特に子供が小さい間は、その子供3人に対して1人の保育士(ローテーションを考えると3人弱程度)が必要になる。
つまり、女性1人が社会に復帰する為には、それだけ同数の保育士がしばらく必要になる。
それだけ雇用が生まれる事になるがそのお金の負担を誰がするのかという事だ。

認可保育園には税金が投入されている。負担者は企業も個人もいっしょくただ。
認可外保育園も認証といった地方公共団体が認めた保育園でも少しではあるが税金が投入されている。
完全なる認可外保育園では、労働者自らが負担しなければならなくなる。

待機児童の問題は前回述べたが、この税金をしっかり投入されている保育園に入れずに地方公共団体が認めた保育園に入っている人は待機児童にはカウントされない。
認可保育園にかけられている税金を傍受出来ず、仕方なく認可外保育園に入っている人との間には受けられる税金のメリットにも差が出る事になる。

■子育てシリーズ

1.保育園と幼稚園の違い(子育てシリーズ1回目)
2.保活!! 保育園(認可)への入れ方(子育てシリーズ2回目)
3.認可外保育園は認可保育園の20倍の死亡率?認可保育園と認可外保育園(無認可保育園)の違い(子育てシリーズ3回目)
4.何故起きた待機児童問題(子育てシリーズ4回目)
5.ビジネスとしての保育園を考える(子育てシリーズ5回目)
6.3年間抱っこし放題政策から保育の問題を考える(子育てシリーズ6回目)

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