架空の会計会社のお話だが、マーケティングやビジネスのマネジメントについての概要を学ぶ事が出来る書籍である。今回はフリーミアムとM&Aのお話。
話としては非常に分かりやすく、要所要所に図がしっかりとあるので入門書としては最適です。でもそのまま今のビジネスにすぐ当てはめるのは危険なのでやめましょう。
フリーミアム
本の中では、1巻、2巻で育て上げた会計ソフトが海外からのフリーミアムモデルの会計ソフトが日本に進出して来たというシチュエーションである。会計ソフトの販売で収益を上げるのでは無く、その会計ソフトに登録されているデータから広告を出してそこから収益を上げるビジネスモデルであると。
会計ソフト自体が無料である事から事業者にとっての敷居はとても低いものになり、利用者数が既存の会計ソフトよりも圧倒的多数になるというメリットがある反面、収益をどう確保するかが課題だが、広告収入だけでやっていけるかというと日本では厳しいんじゃないかなと思う。
日本の中小企業のITリテラシーは恐ろしいくらいに低いの現状である。若い人の中でもPCを触れない人も多い。もちろんビジネス的には黒字にはなるだろうが、ある程度で止まる。本ではビジネスモデルがこの程度であったのがとても残念だったが、黒船来航では無いがこういった新たなビジネスモデルが既存のビジネスを駆逐するという機会を演出したのは良い事だと思う。
フリーミアム自体は日本でもかなり浸透しつつある。フリーミアムの恐ろしい点は、本気でのめり込んだ人からの売上がとても高くなるという事だ。
例として無料で遊べるゲーム(ソーシャルゲーム等々)が該当する。特に家庭用ゲーム機は本体に数万円。ソフトに数千円をまず前払いしなければならない。消費者にとっては面白いかどうかまだ分からないのにお金を前持って払う必要があり、敷居が高い。そして事業者からすると面白いと思った消費者からも、面白くないと思った消費者からも同じ金額だけ売上が立つ。
対してまず無料のゲームは、より楽しもうと思った時にだけお金を払えば良い形であり、消費者にとっては敷居が低い形になる事からユーザー数が圧倒的多数となる。そして面白くてより遊びたいと思う人だけ課金をする事になる。無制限に。事業者からすると面白いと思った消費者からは上限無しの売上を確保する事が出来る。対して、面白くないと思った消費者からの売上は0円になる。消費者からすると、面白くも無いゲームにはお金を払わなくて良いというメリットがある。ソーシャルゲームはお金をたくさん使ってしまうという負の面ばかり取り上げられる事が多いが、実はこういった面白くもないゲームに対してお金は払わなくて良くなったという+の面も実はある。
SONYや任天堂といった家庭用ゲーム機は、スマートフォンの出現で苦しめられている訳ではない。このまずは無料で遊べるゲームの出現によって押されているのが現状なのである。
Googleの事例
M&Aの事例としてGoogleのDoubleClick社とYoutubeの買収の話があった。特に動画と広告の技術の組み合わせが出来るディスプレイ広告の技術が欲しいという点からの買収であった旨の解説であり、既に元を取ったというような表現であった。まあ技術だけならGoogleであればすぐ真似が出来る。しかし特許がある技術となるとそういうわけにはいかない。それ故に買収したと思われるのが、そういった記述は無かった。
M&Aについては、本の中で失敗する事が多い旨明記されている。それはたしかにそうだ。明確な目標が無ければ買収なんてするもんじゃない。
Googleはモトローラの買収も特許が目的だった。自分に無い物を補完する為に買収をする。とても正しい行為だが、実際には特許だけ欲しいだけで、従業員はいらないパターンもある。
ちなみにDoubleClickは広告の配信技術というか特許をしっかりと持っており、これがGoogleの手に渡ったという事は、昨今のアドテクノロジーの強化の源泉はこの辺りにある事は間違い無い。
まとめ
3巻まで出た連載シリーズでしたが、非常に面白い本です。言われてみればああと思う事も多いですが、それを改めてビジネス書の入門書として読むようなイメージです。そして自社の製品やサービスが顧客からどのような評価を受けているのか。これを常に知る事がとても大切である事を感じました。
この本から良いなと思ったフレーズはどんどんビジネス書を読むべきでしょう。この本自体はビジネス書にはならないので、注意が必要です。