塚田農場
ここ数年友人と飲みに行く際には必ずAPカンパニーが運営する居酒屋となる。うまく囲い込まれているが、会員証が社員証になっており、行く事によって昇進をしたりする。
友人も私も味にはうるさい。二人で北海道の海の幸を食べに行ったくらいの物好きだ。そんな二人が囲い込まれるAPカンパニーの居酒屋。そう、塚田農場であり、四十八漁場である。
第一とても料理が美味しい。店員にも活気があり、華やかである。メニューも旬な物が多く、東京であっても地方の名産品を美味しく食べる事が出来る。ベタであるが顧客満足度を上げようとするパフォーマンスがある。
まずビールを頼むとこんな感じだ。
なんというか遊び心満載ではないだろうか。
単なる居酒屋では無い事にさっさと気が付くべきであった。
そこで今回はビジネス目線でAPカンパニーを調べる。
成り立ち
2001年創業。当初は単なる八王子の1店の居酒屋。
2006年から自社農場設立。
2007年から塚田農場の展開。
2011年から四十八漁場の展開。同じく上場。
2012年シンガポール進出。
と目下拡大中である。
ビジネスモデル
APカンパニーとその他の居酒屋との明確な違いは、顧客に提供する食品を自前で生産をしているかどうかだ。基本的な居酒屋は食材は問屋等から調達する事になる。和民といった居酒屋チェーン店も同様であり、基本的な食材は生産者からでは無く間に入る問屋等からの調達という事になる。
APカンパニーでは、鶏肉は宮崎県、鹿児島県、北海道せ自ら(委託含む)生産しており、加工工場まで現地に保有している。つまり、孵化から一貫生産体制による中間流通コストのカットによって、生産者と消費者も含めて利益を得られる仕組みになっている。
例)代表的な料理。地鶏の炭火焼。「じとっこ焼き」
例としては、鶏肉の場合には生産では概ね2000円/羽するらしいが、実際の消費者には6000円/羽となる。APカンパニーの場合には2100円/羽で生産し、消費者には3800円/羽で届く。
実に良く出来た仕組みである。初期コストはかかるが、他の飲食店が安易に真似をする事は高いハードルがある。
もう一つの大きなブランドである四十八市場においても中間流通を排除する事で大きな成功を生んでいる。中間流通業者を省く事で漁師が獲った魚を夕方には提供する事が出来る。
中間流通業者を挟むと良くて翌日提供になる事から、いかに冷蔵技術が向上したとはいえ、新鮮さに適う良さは無い。中間流通業者に払うお金を削減出来る事で安く提供も出来る。
APカンパニーの強み
APカンパニーの他の居酒屋との違いは先のビジネスモデルの通りだ。しかし、APカンパニーの更なる強みは、生産者の思いを丁寧に顧客に伝えているという点である。
観光地に行った際に料理が何故美味しいのか。それはその地方の名産等であり、理由があるからだ。APカンパニーはこの理由をしっかりとメニューにも記載している。
先日行った塚田農場で食べた「加藤えのきの肉巻き」はとても美味しかった。
メニューに生産者の顔もあり、えのきを鍛えるなんていう書き方があるからもうたまらない。美味しく無いはずが無い。
もちろん店員もしゃべるしゃべる。単に料理を持ってくるなんていう他の居酒屋とは全く違う。かわいい制服を着ているが、それだけじゃないのがAPカンパニー。
高いリピート率
安く飲もうと考えた時はもうずっとAPカンパニーでいいやと思う今日この頃です。だって美味しいから。そして1つ1つ少し仕掛けがある。先日行った塚田農場ではビールにハートや顔を描くんですよ。ありがとうと。負けちゃうね。じとっこ焼きを頼むと、赤いゆず胡椒、ハートチャーハン等々をサービスで付けて来る仕掛け。
顧客ロイヤリティをしっかり考えており、満足の次である「感動」をうまく演出しようとして頑張っている。実に素晴らしい。
又、リピート率を経営指標に置いており、それを確かめる為の社員証のシステム。変にIT化をしていないベタな形がとても素晴らしい。
課題点
全てが良いと思われるAPカンパニーであるが、最大の問題は顧客の飽きである。又、人材教育の面も大きな課題点であろう。鶏肉等の初期投資をある程度行っており、それだけの鶏肉を常にさばく為にはある程度の規模は絶対に必要である。規模を拡大する事は当然ながら人を大量に雇わなければならない。今後の質の低下という面が非常に怖い所だ。
ただ、この人材採用についても抜け目なく積極的に対応を行なっている。
このようにうまく大学生を集客している。
変にどこかでバイトをするよりかは、自分にとってどう生かされるかという事が分かるのはとても良い。
採用にまで気を抜かずに努力している企業は、確かに評価されるべきであろう。
第一、浴衣姿の若い女の子が嫌いな男がいようか。
まとめ
APカンパニーの素晴らしい点は、コストカットでの利益至上主義では無く安くて美味しいという面において理由がしっかりと説明出来るという点だ。和民といった大衆酒屋とは完全に一線を引いている。どちらかというとユニクロに近いイメージだ。
というのも、販売する商品の製造から販売まで全て一手に担っているからだ。
ユニクロも販売製品は自らが作り出している。APカンパニーも同様だ。
メインの地鶏を徹底的に自分達で正しく生産し、それをベースに発展させる。
川上から川下までとは最近よく言われているが、中間に入る業者を廃する事で新たなビジネス、成功が出来るとも言える。販売者は売る物が何かを知るべきだ。
消費者はより良く知っている人から買いたいし、それが良い事だと考えている。実にうまく出来たビジネスであり、競合が生まれにくい環境を創りだし、他の飲食店ビジネスとの決定的な差別化になっている。
ただ、会食とかそういう用途では無いので、次の店舗展開としては是非そういった会食に使えるレベルのお店を出していただく事を希望します。料理はほんと美味しいし、こういう理由付けの出来る料理というのはとても良い料理なのです。
参考文献
・AP Company IR
・ありきたりじゃない新・外食 米山 久(創業者である米山氏が書かれたAPカンパニーについての本)
2017年5月に以下記事を書きました
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APカンパニーの塚田農場が弁当事業で復活か
塚田農場覚えてますか? というくらいに塚田農場に行っていない。皆さんそうだと思います。不況時には、 ある程度のお値段でこれだけ美味しくて定員可愛くて面白い! だったのに、好況期に入ってからは中途半端な ...